遡及請求と不服申立ての関係
障害年金には、障害の重さをあらわす等級があります。
これは、診断書などの提出書類を元に決まりますが、場合によってはご自身の認識している実態と合わないと感じることもあります。
そのようなとき、決定を争う手段として不服申立て(審査請求)があります。
ただし、額改定が関わる場面では、不服申立てができるケースとできないケースがあります。
ここでは、特に遡及請求認定日分と事後重症分の違いに焦点を当てて説明します。
不服申立て(審査請求)とは
障害年金の審査結果に納得ができない場合、「審査請求」という不服申立てを行うことができます。
不服申立てが可能なのは、主に以下のようなケースです。
これらのケースでは、審査結果の通知(想定より軽い等級に決定された場合は年金証書)に、「この内容に不服のあるものは……」という教示文が記載されており、これにより審査請求が可能になります。
遡及請求の事後重症分には、通常不服申立てができない
遡及請求では、障害認定日請求を主位的請求、事後重症請求を予備的請求として、障害認定日当時と現在の2枚の診断書を提出します。
障害認定日請求が認められた場合、障害認定日に障害年金の受給権が発生し、その後も現在まで障害状態が継続しているものとして裁定されます。そのため、予備的請求である事後重症請求については、独立した行政処分は行われません。
ここで少し複雑になるのが、遡及請求と額改定請求との関係です。
例えば、現在の診断書の内容が障害認定日当時よりも明らかに重く、より上位等級に該当すると考えられるにもかかわらず、障害認定日と同じ等級で決定された場合でも、現在の障害状態について不服申立てを行うことはできません。
不服申立ての対象となるのは、行政庁が行った処分です。しかし、遡及請求が認められた場合には、現在の診断書に基づく事後重症請求については独立した処分が行われていないため、その部分を対象とした審査請求等は認められません。
一方、障害認定日時点では2級、現在では3級と判断された場合には、障害認定日請求により2級の受給権が発生した後、現在では3級に額が変更される旨の「支給額変更通知書」が送付されます。
この支給額変更は行政処分に当たるため、通知書には審査請求ができる旨の教示が記載されています。そのため、現在の等級(3級)に不服がある場合は、この支給額変更処分を対象として審査請求(不服申立て)を行うことができます。

事後重症分にも不服申立てをするための方法
そこで、明らかに事後重症の症状のほうが重いと考えられる場合には、「額改定請求書」を1枚追加で提出する方法があります。
これにより、遡及請求の審査は「認定日」「現在(職権による額改定)」に加えて、「現在(請求による額改定)」も行われることになります。
審査の結果、認定日と現在の等級が同じであった場合には、額改定請求に対する結果通知が届くため、この通知をもって事後重症請求分についても不服申立てが可能になります。
なお、額改定請求書は必須の提出書類ではないため、通常の遡及請求では年金事務所からの案内はありません。
- タイミングに注意
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額改定はいちど請求すると、次に請求できるようになるのが1年後になります。
そのため、「退職を予定している」「日常生活へのサポートが増える」など、より障害の重さが伝わりやすい状況になる見込みがある場合は、それを待ってから額改定請求を行うのも手です。
まとめ
遡及請求における「認定日分」と「事後重症分」の扱いの違いは、非常に分かりにくい仕組みです。特に、事後重症分は個別の結果通知が届かないという性質上、放っておくと不服申立ての機会を逃してしまいます。
特に、事後重症分に対する不服申立ての可否や、額改定請求書を追加提出するかどうかの判断は、専門的な知識が必要になる場面です。ご自身での判断や手続きが難しいと感じられた場合は、社会保険労務士にご相談ください。
- 小西 一航
- さがみ社会保険労務士法人
代表社員 - 社会保険労務士・精神保健福祉士
