額改定とは
障害年金は、障害の程度に応じて等級が定められ、等級によって支給される年金額が異なります。この等級は一度決定されたら変わらないわけではなく、その後の症状の変化にあわせて見直されることがあります。この見直しのことを「額改定」と言います。
額改定は、障害基礎年金・障害厚生年金のどちらも対象となる制度です。ただし、等級の区分には違いがあり、障害基礎年金は1級・2級のみで、3級という区分は障害厚生年金にしかありません。そのため、障害基礎年金のみを受給している方は、額改定によって1級・2級の間で等級が変わることはあっても、3級になることはありません。
なお、3級の障害厚生年金を受給している方のうち、過去に同じ傷病による障害基礎年金の受給権を有していなかった方は、65歳以上になると額改定請求を行うことができません。
額改定には、日本年金機構側の審査によって行われる「職権による額改定」と、請求者側から申し出て行う「額改定請求」の2種類があります。単に「額改定」と言った場合は、後者の額改定請求を指すことが多いですが、それぞれしくみが異なるため、順を追って説明します。
額改定によって等級が変われば、当然、支給される年金額も変わります。等級ごとの年金額の目安は、以下の通りです。
- 障害基礎年金1級
- 1,059,125円
- 障害基礎年金2級
- 847,300円
- 障害厚生年金3級
- 635,500円(最低保障額)
職権による額改定
職権による額改定とは、請求者からの申し出によらず、日本年金機構側の審査の結果として等級が変わることを指します。これは主に、次の2つの場面で起こります。
遡及請求時の職権による額改定
過去に遡って障害年金を請求する遡及請求の場合、請求日が障害認定日から1年以上経過していると、診断書は2枚必要になります。
審査は「認定日の時点」と「現在の時点」の2つについて行われるため、結果として認定日と現在とで異なる等級が決定することがあります。
例えば、障害認定日の時点では3級に該当し、その後の症状の悪化によって、請求日時点では2級に該当すると判断される場合があります。反対に、障害認定日の時点では2級に該当していたものの、その後の症状の軽快によって、請求日時点では3級に該当すると判断される場合もあります。
この場合、まず障害認定日時点の障害状態に基づいて受給権と等級が決定され、その後の障害状態に応じて、日本年金機構が請求者から別途額改定請求を受けることなく年金額を見直します。このような取扱いを「職権による額改定」と呼びます。
更新時の職権による額改定
同様の職権による額改定は、障害年金の更新(有期認定)のタイミングでも起こります。更新時に提出する診断書の内容をもとに審査が行われ、前回の等級より重くなっていれば上位等級(2級→1級など)に、逆に症状が軽快していれば下位等級(2級→3級など)に、あるいは支給要件を満たさないと判断されれば支給停止になることもあります。
つまり、職権による額改定は、症状が悪化した場合の増額だけでなく、症状が軽快した場合の減額もあり得るという点に注意が必要です。
職権による額改定に共通する注意点
職権による額改定が行われても、新しい「年金証書」が追加で発行されるわけではありません。届くのは「年金決定通知書」または「支払額変更通知書」のみで、これらは年金証書よりも後日届きます。そのため、支給される年金額を確認する際は、最初に届く年金証書だけでなく、後日郵送される通知書もあわせて確認する必要があります。
なお、年金証書が届かない、あるいは紛失してしまった場合に再発行を依頼すると、遡及分の年金証書ではなく、改定後の証書が届きます。これは、日本年金機構が年金証書を再発行する際、年金額がすでに年度ごとに改定されているため、最新の証書しか発行できないしくみになっているためです。
額改定請求
請求者本人が、前回の請求時よりも明らかに症状が悪化したと感じる場合には、「額改定請求書」と診断書を提出することで、額改定を請求することができます。一般的に「額改定」という言葉が使われるときは、こちらの請求による額改定を指すケースが多くなっています。
額改定請求の要件と手続き
額改定請求は、原則として、障害年金の受給権が発生した日または障害の程度について診査を受けた日から1年を経過した後でなければ行うことができません。更新(有期認定)による診査を受けた場合は、その診査日から1年を経過することが必要です。
提出先は、年金事務所または街角の年金相談センターです。障害基礎年金のみを受給している方は、市区町村役場の窓口でも提出できます。
額改定請求書に、原則として提出日前3か月以内の障害状態が記載された診断書必要書類を添えて提出します。
傷病や家族の状況によっては、追加書類が必要になることがあります。
1年を待たずに請求できる例外
額改定請求は、原則として、障害年金を受ける権利が発生した日または障害の程度について診査を受けた日から1年を経過した後でなければ行うことができません。
ただし、障害の程度が重くなり、以下の1~27のいずれかの障害状態に該当した場合は、1年を待たずに額改定請求を行うことができます(国民年金法施行規則33条の2の2、厚生年金保険法施行規則47条の2の2)。
なお、以下の障害状態に該当して額改定請求を行った場合でも、審査の結果、必ずしも上位等級に改定されるとは限りません。
眼の障害
- 1
- 両眼の視力がそれぞれ0.03以下のもの
- 2
- 一眼の視力が0.04、他眼の視力が手動弁以下のもの
- 3
- 両眼の視力がそれぞれ0.07以下のもの
- 4
- 一眼の視力が0.08、他眼の視力が手動弁以下のもの
- 5
- ゴールドマン型視野計による測定の結果、両眼のⅠ/4視標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下、かつ、Ⅰ/2視標による両眼中心視野角度が28度以下のもの
- 6
- 自動視野計による測定の結果、両眼開放視認点数が70点以下、かつ、両眼中心視野視認点数が20点以下のもの
- 7
- ゴールドマン型視野計による測定の結果、両眼のⅠ/4視標による周辺視野角度の和がそれぞれ80度以下、かつ、Ⅰ/2視標による両眼中心視野角度が56度以下のもの
- 8
- ゴールドマン型視野計による測定の結果、求心性視野狭窄または輪状暗点があるものについて、Ⅰ/2視標による両眼の視野がそれぞれ5度以内のもの
- 9
- 自動視野計による測定の結果、両眼開放視認点数が70点以下、かつ、両眼中心視野視認点数が40点以下のもの
聴覚・言語機能の障害
- 10
- 両耳の聴力レベルが100デシベル以上のもの
- 11
- 両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの
- 12
- 喉頭を全て摘出したもの
肢体の障害
- 13
- 両上肢の全ての指を欠くもの
- 14
- 両下肢を足関節以上で欠くもの
- 15
- 両上肢の親指および人差し指または中指を欠くもの
- 16
- 一上肢の全ての指を欠くもの
- 17
- 両下肢の全ての指を欠くもの
- 18
- 一下肢を足関節以上で欠くもの
- 19
- 四肢または手指若しくは足指が完全麻痺したもの(脳血管障害または脊髄の器質的な障害によるものについては、当該状態が6月を超えて継続している場合に限る)
項目19には、完全麻痺の範囲が広がった場合も含まれます。
内部障害
- 20
- 心臓を移植したものまたは人工心臓(補助人工心臓を含む)を装着したもの
- 21
- 心臓再同期医療機器(心不全を治療するための医療機器をいう)を装着したもの
- 22
- 人工透析を行うもの(3月を超えて継続して行っている場合に限る)
その他の障害
- 23
- 6月を超えて継続して人工肛門を使用し、かつ、人工膀胱(ストーマの処置を行わないものに限る)を使用しているもの
- 24
- 人工肛門を使用し、かつ、尿路の変更処置を行ったもの(人工肛門を使用した状態および尿路の変更を行った状態が6月を超えて継続している場合に限る)
- 25
- 人工肛門を使用し、かつ、排尿の機能に障害を残す状態(留置カテーテルの使用または自己導尿(カテーテルを用いて自ら排尿することをいう)を常に必要とする状態をいう)にあるもの(人工肛門を使用した状態および排尿の機能に障害を残す状態が6月を超えて継続している場合に限る)
- 26
- 脳死状態(脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至った状態をいう)または遷延性植物状態(意識障害により昏睡した状態にあることをいい、当該状態が3月を超えて継続している場合に限る)となったもの
- 27
- 人工呼吸器を装着したもの(1月を超えて常時装着している場合に限る)
1年を待たずに額改定請求を行う場合は、日本年金機構が公開している最新の「記入上の注意事項」および「障害状態チェックシート」を確認してください。該当する障害状態や診断書の記載方法について判断が難しい場合は、年金事務所や専門家に相談することをおすすめします。
上記以外にも、1年を待たずに額改定請求ができる場合があります。ご自身の状態が該当するかどうかご不安な場合は、専門家にご相談いただくことをおすすめします。
更新時に等級が据え置かれた場合の例外
もうひとつ、1年を待たずに額改定請求ができる場面があります。それは、更新のタイミングで、明らかに以前より症状が悪化しているにもかかわらず、審査の結果、以前と同じ等級に据え置かれた場合です。
本来、決定内容に納得できない場合は不服申立てという手段がありますが、更新時に等級が変わらなかった場合の通知には、不服申立てについての教示文が含まれていません。そのため、このケースでは不服申立てを行うことができません。
その代わりとして、1年を待たずに額改定請求を行うことが認められています。通常、更新時の診断書(障害状態確認届)は1枚のみの提出ですが、このように等級が据え置かれた場合には、額改定請求書と診断書をあらためて提出することで、現在の症状にあった等級への見直しを求めることができます。
- 小西 一航
- さがみ社会保険労務士法人
代表社員 - 社会保険労務士・精神保健福祉士
