障害年金の手続きは、ご本人やご家族が行うこともできます。
もっとも、状況やさまざまな事情によっては、思うように手続きが進まないこともあります。そのようなときは、一人で抱え込まず、障害年金に詳しい社会保険労務士に相談することも一つの方法です。
ここでは、障害年金の手続きにおける社会保険労務士の役割と、その活用のメリットについてご紹介します。
社会保険労務士の役割
社会保険労務士(略して「社労士」)は、年金や健康保険、雇用保険などの社会保険制度や、労働に関する手続きを専門とする国家資格者です。企業の手続きや労務管理をサポートする専門家として知られていますが、個人からの相談にも対応しています。
障害年金の分野では、制度の説明から必要書類の準備、請求書類の作成・提出まで、手続きをトータルでサポートします。特に、初診日の整理や病歴・就労状況等申立書の作成など、判断に迷いやすい部分について専門的な視点から支援を受けることができます。
また、手続きの流れや注意点をわかりやすく整理し、手続きが適切に進むようサポートする役割も担っています。状況に応じて、どのように進めるのがよいかを一緒に考えていく伴走者のような存在といえるでしょう。
社会保険労務士を活用するメリット
社労士を活用することで得られる主なメリットは、私の考えでは次の4点です。
もっとも、対応できる業務の範囲は社労士事務所ごとに異なるため、あくまで一例として参考にしてください。
1手続きの多くを任せることができる
障害年金の手続きでは、役所や医療機関へ何度も足を運ぶ必要があるほか、病歴・就労状況等申立書の作成や、各種書類の準備など、手間と時間がかかります。こうした手続きの多くを、社労士に任せることができます。
そのため、ご自身の負担を軽減しながら、安心して治療や日常生活に専念しやすくなります。
2実際の生活状況が反映された診断書につながる
あらかじめ就労状況や日常生活の様子などを社労士が整理し、医師が診断書を作成する際の参考となる資料を準備します。こうした情報を適切に伝えることで、本人の生活実態がより反映された診断書につながります。
その結果、実態を踏まえた適切な審査につながることが期待されます。
3不服申立ても引き続き任せられる
万が一、不支給となった場合や、想定より低い等級となり結果に納得できない場合でも、そのまま不服申立ての手続きを引き続き依頼することができます。
4スピード対応で受給額に差が出ることも
障害年金の請求のうち、約6~7割は事後重症請求となります。この場合、年金は請求した月の翌月分から支給されるため、手続きが1か月早まるだけでも、その分受け取れる年金が増えることになります。
また、障害認定日が5年以上前で遡及請求を行う場合でも、早めに請求することで、時効により受け取れなくなる期間を少なくできる可能性があります。
障害年金の手続きに詳しい社労士事務所に依頼すれば、ご自身で進めるよりも、準備期間を数か月程度短縮できるケースも少なくありません。
社会保険労務士に依頼した場合の費用の目安
費用は大きく分けて、依頼時に支払う「着手金(または事務手数料)」と、年金の受給が決定した後に支払う「報酬(いわゆる成果報酬)」、そして実費の3つで構成されています。
なお、着手金(または事務手数料)は、年金の受給可否にかかわらず、返金されないのが一般的です。
| 呼称 | 費用の目安(別途消費税) |
|---|---|
| 着手金(または事務手数料) | 0円~3万円 |
| 報酬(いわゆる成果報酬) | <報酬の設定は事務所によって異なりますが、主に次のいずれかのパターンが多く見られます> ▪️決定した年金の2か月分相当額、または初回振込額の10%のいずれか高い方を報酬とする方法 ▪️決定した年金の2か月分相当額に加え、1年以上さかのぼって支給が決定した場合には、初回振込額の10%を加算する方法 |
| 実費 |
▪️医療機関に支払う文書料など(社労士が一時的に立替払いした費用) ▪️文書の郵送等で使用したレターパック等の通信費など |
社会保険労務士事務所を選ぶ際のポイント
細かなポイントはいくつもありますが、ここでは社労士事務所を選ぶ際に、まず押さえておきたい基本的な3つのポイントをご紹介します。
1障害年金の実務に精通した社労士であること
「社労士であればどこでも大丈夫」と言いたいところですが、実際には障害年金に対応している事務所はそれほど多くありません。
障害年金に特化している、あるいは他の業務も行いつつ障害年金を主軸としている事務所であれば、制度の改正や審査の傾向にも精通している可能性が高く、より適切なサポートが期待できます。
2費用と対応範囲がはっきりしていること
これは社労士事務所に限った話ではありませんが、料金や対応業務がはっきりしておらず、契約書を交わさない業者は、思わぬトラブルになることがあります。
また、受給の可否に大きく関わる「受診状況等証明書」の取得や、「病歴・就労状況等申立書」の作成などを、ほとんど依頼者任せにしてしまう事務所についても注意が必要です。
まずは、事務所ホームページ(ない場合は電話等)で費用と対応範囲を確認し、依頼時には契約書で確認してから依頼するようにしましょう。
3不服申立ての手続きにも対応していること
社会保険労務士事務所に依頼するメリットの一つとして、不服申立てについても引き続き相談・依頼できる点が挙げられます。
ただし、事務所によっては不服申立ての手続きに対応していない場合もあります。その場合、結果に納得がいかないときには、あらためて対応可能な事務所を探す必要が生じます。
不服申立てには期限があり、審査請求は原則として3か月以内に行う必要があります。社労士事務所では、これまで支援してきた依頼者からの不服申立てを優先して対応するため、準備期間の関係から新たな依頼には対応が難しいと判断されることもあります。
不服申立ての手続きにも対応してもらえるかどうかは、あらかじめ確認しておくことが大切です。
- 小西 一航
- さがみ社会保険労務士法人
代表社員 - 社会保険労務士・精神保健福祉士
