ここに文章を入力社会保険労務士・精神保健福祉士の小西です。
これまでブログでは、自分の気持ちや感情を前面に出す文章を書くことに少し照れくささがあり、あまり書かないようにしてきました。
でも今回は、とても嬉しく、心に残る出来事があったので、少しだけ私自身の思いを書かせていただこうと思います。
8年ぶりの再開
先日、Nさんとご両親が事務所を訪ねてくださいました。
約8年ぶりの再会です。
Nさんは軽度知的障害があり、今回は2回目の更新のため、当社の「簡易更新サポート」をご依頼いただきました。
ご両親には、「将来、自分たちに万が一のことがあっても、Nさんが一人で相談に来られるようにしておきたい」という思いがあり、ご家族そろってお越しくださいました。
そのとき、Nさんが取り出した一枚の名刺のお話です。
8年前の出来事
今から約8年前、私が開業して2年経過した頃のことです。
Nさんのご両親から、「障害年金が不支給になってしまった」とご相談をいただきました。
Nさんは高校(サポート校)を卒業後、全寮制の職業訓練校で生活しており、20歳になったことを機に障害年金を請求しましたが、不支給という結果でした。
当時(平成29年~平成30年)は、精神・知的障害の等級判定ガイドラインが策定され、障害基礎年金の審査が都道府県ごとの認定から東京への一元化へと大きく変わった時期でした。
それまで比較的緩やかな認定傾向だった神奈川県から見ると、審査のハードルが上がったと感じるケースが少なくありませんでした。
しかし、その変化は当時、現場の医師やソーシャルワーカーにはほとんど知られておらず、従来どおりの診断書で請求した結果、不支給となるケースが相次いでいました。
医師の言葉
私は診断書を作成された医師に面会し、当時の認定状況を説明しました。
先生はとても驚かれ、不服申立てのための「医師の意見書」や再請求用の診断書の作成に全面的に協力してくださいました。
特に印象的だったのは、不服申立てのための意見書です。
その内容は、前回の診断書では障害の実態を十分に伝えられていなかったことを認める趣旨のものでした。
一般的には、自らの診断書に不十分な点があったことを認める内容の文書を作成することは、医師にとって決して簡単なことではありません。
そこで私は思わず、
「先生は、どうしてここまで協力してくださるのですか」
とお聞きしました。
すると先生は、穏やかな口調でこうおっしゃいました。
「間違いを認めるのにプライドが邪魔をするなら、僕にはそんな小さなプライドはないからね。」
その言葉に、私は深く感銘を受けました。
あのときの先生が、その後独立開業され、現在も親しくお付き合いさせていただいているKOKORONEメンタルクリニックの龍田院長です。
そして8年後
結果として、不服申立ては認められませんでした。
しかし、その後の再請求によって、Nさんは障害基礎年金2級に認定されました。
そんな経緯もあり、Nさんのことは私にとって特に印象深いご相談者のお一人です。
そして先週、ご本人とご両親が事務所へ来てくださいました。
ご両親は、
「私たちもいつまでも元気でいられるわけではありません。将来、一人になっても更新手続きに困らないように、小西さんの事務所へ一人でも来られるようにしておきたかったんです。」
と話してくださいました。
そのとき、Nさんが財布から取り出したのが、この一枚の名刺でした。

実はこの名刺、ご自宅の冷蔵庫に約8年間貼られていたそうです。
ほどよく日焼けし、角も少し傷んでいました。
これは私が開業して初めて作った名刺で、今とはロゴもデザインも違います。
その名刺を見た瞬間、不思議な気持ちになりました。
まるで私の代わりに、この名刺が8年間ずっとNさんご家族を見守ってくれていたように感じたのです。
少し色あせたその姿は、長年役目を果たしてきた老兵のようでもあり、どこか頼もしく見えました。今回、新しくお渡しした名刺が、これからはその役目を引き継いでくれるのだと思います。
社会保険労務士という仕事は、年金が決まったら終わりではありません。
ご本人やご家族の人生に長く寄り添う仕事なのだと、あらためて実感した一日でした。
- 小西 一航
- さがみ社会保険労務士法人
代表社員 - 社会保険労務士・精神保健福祉士
