社会保険労務士・精神保健福祉士の小西です。
昨日、厚生労働省が「不支給倍増報道」を受けて内部調査結果を公表しました。
抽出調査の結果、精神障害(知的障害を含む)の不支給割合は12.1%(前年度6.4%)と約1.9倍で共同通信の報道内容が裏付けられた格好になりました。
「令和6年度のの認定状況についての調査報告書」について|厚生労働省
これを受けて、共同通信が「不支給件数少なく計上 障害年金の公表統計」と記事にしました。
不支給件数少なく計上 障害年金の公表統計(共同通信) – Yahoo!ニュース
記事では「年金機構内部の集計表(内部集計表)では2023年の不支給が約2万件なのに対して、毎年9月に公表している障害年金業務統計(公表統計)は約1万3千件で、約7千件少なかった」と報じています。原因は、下の図のように内部集計表と公表統計のカウント方法の違いを指摘しています。
画像:「不支給件数少なく計上 障害年金の公表統計」障害年金不支給件数のカウント方法の違い(Yahooニュース、共同通信)
この図をみても、障害年金制度に詳しくないと分かり難いので解説します。
図には「1人が2件申請した場合」とあるので、「精神障害」と「外部障害」など異なる傷病の複数申請と誤解してしまいそうです。
しかし、ここで言う2件とは、記事にもあるように過去分と今後分のことです。つまり、ひとつの障害で遡及請求をするときを指します。
遡及請求とは、障害認定日(原則として初診日から1年6か月後)より1年経過後に行う申請方法のことで、診断書は現在のものと、障害認定日のものの合計2枚が必要になります。この場合の取り扱いとして、次の2件の申請を同時に行うことになります。
内部集計表では2件の申請とされていますが、公表統計では、①②を一括りにして1件の申請とし、どちらか一方でも支給となれば「支給」、両方が不支給の場合のみ「不支給」とカウントしていることがわかりました。
実務者の印象として、遡及請求の結果①は不支給、②は支給になることは割とよくありますし、これをまとめて「支給」にしまうと、約2万人の不支給が約1万3千件と約7千件も少なくなり実態を反映した統計とは言えません。
不支給件数を少なく見せるために、年金機構が意図的に異なるカウント方法を採用しているとは個人的には思いません。
しかし、今回の報道で公表統計の信用性は揺らぐことになるでしょう。

- 小西 一航
- さがみ社会保険労務士法人
代表社員 - 社会保険労務士・精神保健福祉士