社会保険労務士・精神保健福祉士の小西です。
以前、障害年金請求後に医師照会(カルテの提供)が増加していることについて取り上げました。
今回は医師照会(カルテの提供)が求められる可能性の高いケースについて解説します。
やや高額改定請求
額改定請求とは、初回裁定請求で決定した時点よりも障害の程度が重くなり、上位等級(3級→2級・2級→1級)に改定を求める請求です。額改定請求は1~5年後の再認定(更新)を待たず請求可能ですが、精神障害の場合は、裁定請求から1年の待期期間が設けられています。
これまで特殊な例を除き、額改定請求で医師照会(カルテの提供)を求められたケースはありませんでしたが、昨年(2024年)以降は散見されるようになりました。特に待期期間満了後、数か月以内の額改定請求、遡及請求と一緒に額改定請求書を提出する場合、医師照会(カルテの提供)を求められるケースが多いため【やや高】としました。
可能性高1年以内の再請求
再請求とは、障害の程度が軽かった等の理由により初回裁定請求が不支給になり、しばらく経過した後に増悪した場合、あらためて裁定請求する方法です。再請求に待期期間はありませんので、不支給になった後すぐに行うことができます。ただし、最近の傾向として、前回の請求から1年以内の再請求は高確率で医師照会(カルテの提供)が求められます。前回の請求から複数年経過している場合を除き、再請求は医師照会(カルテの提供)を求められることを念頭に準備・対策することをお勧めします。
可能性高診察した医師と異なる医師が診断書を作成
ここでいう【診察した医師と異なる医師】とは、例えば障害認定日の診断書の作成を断られ、仕方なく当時のカルテを提供してもらい、代わりに現在の主治医に障害認定日の診断書を作成してもらうケースです。この場合も高確率で医師照会(カルテの提供)が求められます。
よくあるのが、当時の医師が退職している場合、同じ医療機関の別の医師が障害認定日の診断書を作成しますが、この場合は医師照会(カルテの提供)を求められる可能性は低いです。
やや高重要箇所に訂正が多い診断書
等級の認定に大きな影響を与える「日常生活能力の判定」「日常生活能力の程度」の選択項目が重い方へ複数訂正されている診断書は審査側の疑義が生じやすいです。また、「改善」「軽快」「自立」等ポジティブなワードが訂正されている場合も同様です。このような場合、印刷した診断書であれば、訂正後の診断書を出力してもらうのがベストですが、手書きの場合はあらかじめ診断書に訂正した理由も付記してもらうようにしましょう。
可能性有請求病名に係る症状の記載が少ない診断書
例えば、請求病名が「うつ病」にも関わらず、診断書に記載されているのがパニック発作、漠然とした不安、強迫観念・行為など神経症の症状がメインの場合です。この場合も請求病名について審査側の疑義が生じやすいです。請求病名の典型的な症状(うつ病であれば憂うつ気分)があれば、それらの症状も盛り込んでもらうようにしましょう。
医師照会(カルテの提供)の返戻があると、医療機関によってカルテ開示の手続きに時間がかかるほか、コピー代のほか高額の開示手数料が発生する場合があり請求者の負担が大きくなります。
審査側の疑義が生じやすい箇所については、上記の対策することにより医師照会(カルテの提供)の可能性を低くすることを心がけましょう。

- 小西 一航
- さがみ社会保険労務士法人
代表社員 - 社会保険労務士・精神保健福祉士