認定調書の破棄報道
昨年末から今年初めにかけて報道された「年金機構職員が医師の判定結果を破棄していたのではないか」という問題について、
厚生労働省は『障害年金における認定調書の取扱いについて(令和8年4月30日)』を公表しました。
今回の資料では、実態調査の結果と、今後の改善策がまとめられています。
報道の詳しい内容は、過去記事で紹介しています。
認定調書は本当に「破棄」されていたのか
調査の結果、次の点が確認されています。
- 記載ミスや内容の不備がある場合には、再審査が行われていた
- その過程で不要となった認定調書は、一定期間保管後に廃棄されていた
- 別の認定医に依頼し直す主な理由は、審査期間(3か月)を守るため
つまり、意図的に結論を変えるための操作というよりも、業務上の運用の中で行われていた対応とされています。
なぜ「別の認定医」に依頼することが起きていたのか
背景には、現場の負担の大きさがあります。
- 審査期間(3か月)の遵守が強く求められている
- 認定医は非常勤が多く、スケジュール調整が難しい
- カルテ照会などの確認作業(疑義照会)が増えている
こうした事情から、やむを得ず別の認定医に依頼するケースがあったとされています。
認定プロセスの課題(特に精神の障害)
精神の障害については、数値で割り切れない「総合評価」が中心となるため、
- 判断の幅が広い
- 医師ごとの判断に差が出やすい
といった特徴があります。
そのため、より客観性・公平性を高める仕組みづくりが課題とされています。
今後の主な改善策
今回の公表では、次のような見直しが示されています。
①手続きの透明化
- 原則として同じ認定医に確認する
- 別の認定医に変更する場合でも
→複数の医師で審査
→当初の認定調書は保存(廃棄しない)
②審査期間の見直し
- 通常は3か月
- 複数回の審査が必要な場合は
→ 4か月に延長
③公平性・客観性の強化
④職場環境の改善
- 上司と部下の連携強化
- 研修や人事異動の活性化
- 認定医とのやり取りを個人任せにしない体制へ
⑤第三者によるチェック
- 社会保障審議会によるモニタリングを導入
- 継続的に状況を確認していく仕組みを整備
まとめ
今回の調査から見えてきたのは、
- 手続きのルールが必ずしも明確ではなかったこと
- 審査現場が時間的に余裕のない状況にあったこと
- とくに精神の障害では、判断が難しくなりやすいこと
といった、審査の仕組みそのものに関わる、根本的な課題です。
今後は、「複数の医師による審査」「記録の保存」「手続きの明確化」といった方向で見直しが進められることになります。
今回の調査は第三者機関によるものではなく厚生労働省が主体となって実施されたものであり、公表内容には一定の配慮がなされていると考えられますが、現時点としては現実的な着地点といえるでしょう。
重要なのは、こうした取り組みが実際に機能し、障害年金の審査がより透明で公平なものへと改善されていくかどうかです。今後の運用状況についても、引き続き注目していきたいところです。
- 小西 一航
- さがみ社会保険労務士法人
代表社員 - 社会保険労務士・精神保健福祉士
