「消えた年金問題」から20年
「消えた年金問題」が社会問題となってから、まもなく20年になります。
世間では「もう終わった話」と思われているかもしれません。しかし、約20年間にわたり障害年金の実務に携わっていると、今でも年金記録の未統合や漏れが見つかることがあります。
「消えた年金問題」とは、本来あるはずの年金記録がなくなったわけではなく、誰の記録なのか分からなくなったために、正しく年金額に反映されない可能性が生じた問題です。
正式には「年金記録問題」または「未統合記録(持ち主不明記録)問題」と呼ばれます。
どのような問題だったのか
2007年(平成19年)、約5,095万件もの年金記録が、基礎年金番号に結び付いていないことが判明しました。
これらの記録は「宙に浮いた年金記録」とも呼ばれました。
実務上は年金手帳番号(手番)と呼ばれます。
なぜ起きたのか
主な原因は次のとおりです。
- 1997年(平成9年)に基礎年金番号制度が始まる前は、国民年金や厚生年金など制度ごとに異なる番号で管理されていた。
- 転職や結婚・離婚による氏名変更などで、一人が複数の年金番号を持つことが珍しくなかった。
- 基礎年金番号へ統合する際に、記録の名寄せ(同一人物の記録をまとめる作業)が十分に行われなかった。
- 紙台帳からコンピュータへの入力ミスや、生年月日・氏名の誤登録などもあった。
どのような影響があったのか
記録が本人に結び付いていないと、
- 年金額が本来より少なく計算される
- 年金を受給できるはずの期間が反映されない
- 受給開始後に記録が見つかり、年金額が増額される
といった事態が生じました。社会的な批判は非常に大きく、社会保険庁への信頼は大きく損なわれ、その後、社会保険庁は廃止され、2010年に現在の日本年金機構へ移行しました。
今でも確認した方がよい人
特に次のような方は、一度年金記録を確認する価値があります。
- 1997年以前から年金に加入していた方
- 転職が多かった方
- 結婚・離婚などで姓が変わった方
- 旧姓で働いていた期間がある方
- 昔、国民年金と厚生年金を行き来した方
年金記録は、ねんきんネットや最寄りの年金事務所で確認できます。記録漏れが疑われる場合は、「年金記録照会申出書」に、記録漏れと思われる期間や当時勤務していた事業所の名称・所在地などを記入して提出します。
その後、日本年金機構が調査を行い、記録漏れが確認されれば、年金記録が訂正・統合されます。
障害年金においても、年金手帳番号を基礎年金番号へ統合することで、請求できる年金制度や支給される障害年金の額が変わる場合があります。
当社では、受任後、障害年金の請求手続きだけでなく、年金記録や年金手帳番号の有無についても確認し、必要に応じて基礎年金番号への統合手続きを行っています。
年金記録は障害年金の受給資格や年金額に影響を及ぼすことがあるため、正確な記録の確認は請求手続きにおいて欠かせない重要な作業の一つです。
- 小西 一航
- さがみ社会保険労務士法人
代表社員 - 社会保険労務士・精神保健福祉士
