年金制度が変わります
横浜オフィスの黒川です。
令和7年5月16日に提出された、「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」が6月13日に成立となりました。
この法律は、社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化を図る観点から、働き方や男女の差等に中立的で、ライフスタイルや家族構成の多様化を踏まえた年金制度を構築するとともに、所得再配分の強化や私的年金制度の拡充等により、高齢期における生活の安定を図るためのものとされています。
詳しくは厚生労働省HPの下記をご参照下さい。
社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律の概要(厚生労働省)
将来の基礎年金の給付水準の引き上げ等については省略いたします。
主な改正点
主な改正点は以下となります。
1)被用者保険の適用拡大
中小企業の短時間労働者などが、厚生年金や健康保険に加入し、年金の増額などのメリットを受けられるようにするとして、社会保険の加入対象の拡大をします。
これは、2016年10月より段階的に進んでいました。
今回の改正では、以下のような点が変更になります。
- 要件の変更
- 賃金要件(月額88,000円以上)や企業規模要件(従業員の数)が撤廃となりますが、これは、令和9年10月1日から令和17年10月1日までの間に段階的な撤廃となります。
- 非適用事業所の解消
- 常時5人以上を使用する個人事業所の非適用事業所を解消し、被保険者保険の適用事業とする(令和11年10月1日施行)但し、既存事業所は経過措置として当分の間は適用しない。
- 適用範囲の拡大に伴う保険料負担割合の変更
- 適用拡大に伴い、保険料負担割合を変更することで(現在は労使折半)
労働者の保険料負担割合を軽減できることとし、折半を超えて事業主が負担した保険料を制度的に支援する(令和8年10月1日施行)
2)在職老齢年金制度の見直し
働く高齢者が社会にとってますます重要となっていくことから、高齢者が働きながら、より年金を受給しやすい制度にしていくために、支給停止基準額を50万円(令和6年度)から62万円に引き上げる(令和8年4月1日施行)
3)遺族年金の見直し
- 男女差の解消
- 遺族厚生年金の男女差を解消し、18歳未満の子のない20~50代の配偶者を原則5年の有期給付(現在では、30歳未満の女性が5年間の有期受給で、男性は、55歳以上で死別し、60歳からの給付)とし、60歳未満の男性も対象となる。(令和10年4月1日施行)
- 子に支給する遺族基礎年金について
- 子に支給する遺族基礎年金について、遺族基礎年金の受給権を有さない父母と生計を同じくすることにより支給停止に係る規定の見直し
(令和10年4月1日施行)
4)厚生年金保険料の標準報酬月額の上限を段階的引き上げる。
上限額を65万から75万に段階的に引き上げ
68万(令和9年9月1日施行)
71万(令和10年9月1日施行)
75万(令和11年9月1日施行)
5) 私的年金制度の見直し
- 個人型確定拠出年金の加入年齢引き上げ
- 個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入可能年齢を70歳未満に引き上げる。
- 企業年金運用の見える化
- 企業年金の運用の見える化(情報開示)として厚労省が情報を集約し公表する
その他
- 障害年金・遺族年金の直近1年要件の延長
- 特例措置として、令和8年4月1日前に初診日等ある場合は、初診日等の前々日までの1年間に未納がなければ納付要件を満たしたものとして取り扱われる。
令和8年4月1日が10年延長され、令和18年4月1日までとする時限措置とする(公布日施行) - 国民年金納付猶予制度の延長
- 令和12年6月までの間、同居している世帯主の所得に関わらず、本人と配偶者の所得要件での判断とし、実際に保険料を支払われるようになった時点で追納できる仕組み。令和17年6月まで5年延長の時限措置
- 国民年金の高齢任意加入について対象を追加
- 老齢基礎年金の受給要件を満たさない方の任意加入特例を昭和40年4月1日から昭和50年4月1日まで本措置の延長(公布日施行)
- 離婚分割の請求期限の延長
- 現在は離婚後2年であるが、離婚時の財産分与請求権の除斥期間が2年から5年に延長されることに伴い、2年から5年になる(公布日から1年を超えない範囲内において政令で定める日施行)
- 子に係る加算額の見直し
- 年金を受給しながら子を育てる方への支援を強化する観点から給付を手厚くする。
現在受給している者も含めて子に係る加算額の引き上げ
子に係る加算のない年金については、子に係る加算を創設
但し、子に係る加算については「国内居住要件」を制定
第2子、第3子を一律とする
●上記以外にも、外国人の脱退一時金についてもございます
年金制度の改正に伴い、障害年金代行業務には直接関係ないことでも理解することで、より確かな情報をご依頼様に提供できるよう日々精進してまいります。
- 黒川
- さがみ社会保険労務士法人
横浜オフィス マネージャー- 社会保険労務士・社会福祉士・両立支援コーディネーター
