社会保険労務士・精神保健福祉士の小西です。
1月15日、「判定結果の破棄」をめぐる続報が報じられました。本記事では、その概要を整理し、あわせて個人的な印象をお伝えします。
報道の概要
2026年1月15日報道(47NEWS)
「障害年金」の判定結果を、ひそかに職員が捨てていた…日本年金機構 でも「職員が悪い」では解決しない根本的な原因とは
明らかになった「判定結果の破棄」
今回の報道で、年金機構の職員が、認定医の判定結果が「この判定はおかしいのでは」と感じた場合、そのまま使わず、ひそかに破棄して別の認定に再判定を依頼していたケースがあったことが分かりました。
本来、認定医が「支給」と判断すれば、その結果が尊重される仕組みで、職員が判断を覆す権限はありません。記録を捨てていたという点も、制度への信頼を揺るがす重大な問題です。
なぜこんなことが起きたのか
背景には、判定の仕組みそのものの難しさがあります。
障害年金の審査は、診断書などの書類だけをもとに、原則として一人の認定医が短時間で判断します。
特に精神障害や発達障害は数値で測りにくく、医師によって判断に差が出やすい分野です。
そのため職員が「この判定はおかしいのでは」と感じるケースが生まれていたとみられます。
不信感が広がる構造
障害のある人や家族の側には「本当は年金を出したくないのではないか」という不信感があります。
一方、年金機構側にも「不正受給を狙う申請があるのでは」という疑いが根強くあります。
こうした相互不信が、透明性の低い運用を長年見過ごしてきた要因とも言えます。
これから求められること
今回の問題は、特定の職員だけの責任ではありません。
制度の弱点を認識しながら、大きな見直しをしてこなかった国の責任も問われています。
複数の専門家が話し合って判定する仕組みなど、より納得できる制度に変えていくことが、利用者の安心につながるはずです。
記事を読んでの率直な所感
記事では、「障害年金センター」に勤務する職員Aさんの証言をもとに、内部の実情が具体的に描かれており、請求件数の増加により、現場が時間に追われながら審査業務を行っている状況がうかがえました。現場の厳しさ自体は理解できる部分もあります。
しかし、だからといって、職員の判断によって認定医の判定結果を事実上なかったことにする行為が正当化されるものではありません。
また、「支給判定が不支給に覆った例はほとんどなく、むしろ支給に転じた例の方が多かったと思う。悪意で行っていたわけではない」とする機構幹部の説明も、この問題の本質を説明するものとは言い難いと感じます。
特に気になったのは、年金機構内に「不正に受給しようとする障害者や社労士がいる」という認識が広がっているとされる点です。
あたかも問題の原因が請求者や支援する社労士側にあるかのような印象を与えかねません。こうした見方は、今回明らかになった運用上の問題から目をそらしているようにも思えます。
まず求められるのは、事実関係を丁寧に検証し、どこに責任があるのかを明確にすることです。それを行わない限り、同様の問題は今後も繰り返されるのではないでしょうか。
- 小西 一航
- さがみ社会保険労務士法人
代表社員 - 社会保険労務士・精神保健福祉士
