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障害年金業務に求められる「調整力」
公開日:2026/10/26
  最終更新日:2026/10/26

障害年金業務に求められる「調整力」

審査担当者とのコミュニケーション 2つの事例

社会保険労務士・精神保健福祉士の小西です。

障害年金の請求手続きを進めるうえで、審査担当者とのコミュニケーションは非常に重要です。同じような状況であっても、担当者によって対応が異なることがあります。最近、実際に経験した2つの事例をご紹介します。

カルテ照会に対する担当者の異なる対応

最近、別々の案件で、ほぼ同時期に日本年金機構からカルテ照会が入りました。いずれも医療機関からカルテの写しを取得するには、5万5,000円もの費用がかかるというケースでした。なお、それぞれ異なる医療機関です。この費用負担について審査担当者に相談したところ、対応が大きく分かれました。

【担当者Aの対応】

「費用が高額になる事情を任意の申立書に記載して返戻していただければ、認定医に確認します。そのうえで、カルテが必要と判断された場合には、改めて返戻します」

【担当者Bの対応】

「カルテ照会に応じられないのであれば、その旨を記載して返戻してください。再返戻はしません。すでに提出されている診断書等の資料のみで判断します」
同じような状況でありながら、対応は大きく異なりました。

担当者Aの対応を引き合いに出すべきか?

このような場合、担当者Bに対して「別の担当者はこのように対応してくれました」と説明したくなるかもしれません。しかし、私はこの方法には慎重であるべきだと考えています。
なぜなら、担当者Aは、請求者の事情を考慮して、可能な範囲で柔軟に対応してくれているのかもしれないからです。

その対応を別の担当者に伝えた結果、組織内で問題視され、これまで認められていた柔軟な対応までできなくなってしまう可能性があります。目の前の案件を有利に進めようとした結果、かえって今後の請求者にとって不利益な状況を招いてしまうことも考えられます。

私ならどう対応するか

今回の担当者Bの回答が、組織として統一された取り扱いなのか、それとも担当者個人の判断なのかはわかりません。そのため、まずは事実関係を整理した書面を提出することが重要だと考えています。

具体的には、カルテ取得に5万5,000円もの費用がかかること、請求者にとって大きな経済的負担となることなどを説明し、提出済みの診断書等で判断できないか、改めて検討をお願いするという方法です。

そのうえで、担当者個人の判断だけで結論を出すのではなく、必要に応じて上席者や認定医も含め、組織として判断していただくことがポイントだと考えています。
もちろん、カルテが審査上必要な資料であると判断されれば、その提出を求められることもあるでしょう。重要なのは、担当者と対立することではなく、請求者の事情を正確に伝え、適切な判断につなげることです。

医療機関との調整でも同じことがいえる

これは、相手が医療機関であっても全く同じことがいえます。
例えば、診断書の作成や記載内容について、医療機関ごと、あるいは医師ごとに対応が異なることがあります。
ある医療機関で認められた対応を別の医療機関に持ち出すことで、かえって相手の態度を硬化させたり、これまでの柔軟な対応が見直されたりする可能性もあります。
また、同じ医療機関であっても、医師や事務担当者によって対応が異なることもあります。
そのような場合も、他の担当者の対応を安易に引き合いに出すのではなく、相手の事情を理解しながら、どのような方法であれば対応していただけるのかを考えることが大切です。
一人の担当者の柔軟な対応を守ることが、結果として他の請求者の利益につながる場合もあります。

障害年金業務に求められる調整力

障害年金業務に求められるのは、書類を作成する能力や制度に関する知識だけではありません。審査担当者や医療機関の立場、組織の事情も理解しながら、請求者にとってより良い対応を模索する「調整力」も重要だと考えています。

担当者の回答に納得できないからといって、すぐに反論したり、他の担当者の対応を引き合いに出したりすることが、必ずしも良い結果につながるとは限りません。
もちろん、必要な場面では、根拠を示して意見を伝えることも大切です。
ただし、正しいことを主張するだけでは、物事が円滑に進まないこともあります。
相手の立場を尊重しながら、伝えるべきことは伝え、必要な判断を求める。
そして、目の前の案件だけでなく、今後の請求者への影響も考えながら対応する。
こうした地道な調整も、障害年金業務において大切な仕事の一つだと思います。

社会保険労務士・精神保健福祉士 小西 一航
小西 一航
さがみ社会保険労務士法人
社会保険労務士・精神保健福祉士

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