平塚オフィスの金子です。
先日、身体のリハビリを専門にする
作業療法士の方とお話しする機会がありました。
その方によると…
「リハビリにはエビデンス(科学的に裏付けられた根拠)があるが、
いくら良くなるための根拠があるといっても
リハビリのやり方によっては患者さんに抵抗感を抱かせてしまう。」
とのことでした。
そして、作業療法士のなかには、
エビデンスに裏付けされた方法を身に付けているという自信からか、
心理的な抵抗感への配慮がおろそかになってしまう方がいる
という悩みを抱えていました。
病院に行ったとき、
人としてではなく一(いち)患者として、
ただ治療対象とみなされることへの
抵抗感はとてもよく分かります。
昔の歯医者などはその典型例ではないでしょうか。
ドリルのギンギンという音と
子どもの泣き叫ぶ声が響き渡る病院で、
不安に満ち満ちながら、順番を待っていたものです。
合理的に突き詰めて考えれば、
歯医者に行く目的は治すことであり、
歯医者の目的は科学的根拠に基づいた治療を行うこと。
そこにある「不安感」への対応は、
優先度としてみれば高くはないのかもしれません。
しかし、患者さん側の気持ちも大事だということで、
ナラティブ(語り)を重要視する
解決志向アプローチという方法論も展開されてきております。
また、変わり種ではありますが、
できるだけ患者さんの不安を減らすように
病院を優しいデザインしようという試みもあります。
(なんと、江戸川病院のMRIには巨大なマンモスの顔が付いています。)
件の作業療法士の方は、リハビリを適用する際に、
患者さんの抵抗感を減じるため、
認知行動療法を応用しているとのことでした。
手段(治療方法)と目的(治ること)の隔たりを
無理やり越えようとしてしまうと
悪しきパターナリズムに陥る危険性があります。
合理的にみると一見無駄にも思えるこの隔たりを、
実に丁寧に渡っていくことが重要なのだなあと
臨床に携わる方のお話を聞いて再認識いたしました。

- 金子
- さがみ社会保険労務士法人
湘南平塚オフィス所属 - 精神保健福祉士